春の雪―豊饒の海・第一巻 (新潮文庫)

春の雪―豊饒の海・第一巻 (新潮文庫)

ふえええ。悲しいよう。悲しいよう。清顕死んじゃったよう。うう。なんて美しかったんだろう。なんてきらびやかな死だろう。神様。
無念のうちに死んでいったように思われる清顕が美しくて美しくてたまらない。あの最初の頃の、聡子に常に意地悪く接してきていた、あの鋭利で壊れやすい割れ物のような刃の青年はどこへ行ってしまったのか、不思議なように思われる。彼は、いつの間に激情に任せられる青年になってしまったのだろう。清顕は、常に熱を帯びた闇であった。熱を帯びた闇は何処へ行き、何処へ消えていったのだろう。特筆すべきは、これが第一巻で、あと三冊もあることだ。本田はこの先どのような形で説明者及び究極に近い傍観者となって物語に触れてゆくのだろう。本田には幸せになってほしい。ああ、聡子は幸せだったのだろうか。本田とあの従姉妹はどのような関係に発展してゆくのだろうか。楽しみでしょうがない。それにしても、ああ、あの熱に浮かされた最期の清顕の姿といったら!

春の雪、青春の終わりを感じ取りその青春の熱に溶けていった雪、および終に完成した彼の美しさ、および彼と聡子の互いに関しての恋愛感情、それの齎した幸福、それらすべてが降った側から消えてゆくそれなんでしょうね。